校正の仕事をしていると、「あれ、この言葉どっちだったかな」と手が止まる瞬間があります。そのたびに辞書を引き、資料に当たって確かめた記録を、このブログに少しずつ残してきました。このページは、そのまとめ(もくじ)です。
気になる言葉から、どうぞ読んでみてください。すべて広辞苑(第七版)・明鏡国語辞典(第二版)・記者ハンドブック(第14版)などの実物で確認したうえで書いています📚
目次
似ている漢字・表記で迷う言葉
- 「お椀」と「お碗」の違い
木の器は「椀」、陶磁器は「碗」。部首が意味を背負っています - 「羽」と「羽根」の違い
体についていれば「羽」、離れたら「羽根」が基本です - 「蒸留」と「蒸溜」
お酒の世界では「蒸溜」。文脈で選ぶ言葉です - 「遅れを取る」と「後れを取る」
時間なら「遅れ」、負けるなら「後れ」 - 「一つづつ」と「一つずつ」
本則は「ずつ」。「ぢ・じ」「づ・ず」の使い分けも - 「魔方陣」と「魔法陣」
算数の問題に出てくるのは、どちら? - 「極め付き」と「極め付け」
2冊の辞書を並べると、見えてくることがあります - 「裏路地」より「路地裏」
ベテラン校正者に教わった、指摘のしかた - 「冬季」と「冬期」
日付で区切れるかどうかで見分けます
読み方・意味を取り違えやすい言葉
- 「間髪」は「かんぱつ」ではありません
間に髪の毛一本も入る隙がない——語源を知ると腑に落ちます - 「待ち侘びる」はワクワク待つこと?
辞書では「待ちくたびれる」でした - 「破天荒」の本当の意味
中国の科挙にまつわる、素敵な由来があります - 「固定概念」は辞書にない?
正しくは「固定観念」です - 「明るみになる」は誤用?
正しくは「明るみに出る/出す」 - 「余すことなく」?「余すところなく」?
「ところ」は場所ではなく”残り”のことでした - 「荒げる」と「荒らげる」
本来は「あららげる」。でも、どちらも辞書にあります - 「焦点を当てる」って正しい?
焦点は「絞る」もの。混ざりやすい言い方です - 「舵を取る」と「舵を切る」
導くなら「取る」、向きを変えるなら「切る」 - 「経験値」はゲームから広まった言葉?
専門用語が日常語に生まれ変わるまで - 「ラチ内」「ラチ外」って?
駅と競馬場、そして「埒が明かない」がつながります - 「患者様」も「お客様は神様です」も
はじまりは、どちらも善意でした - 「手をこまぬく」は誤植? いいえ、本来の形です
本来は「こまぬく」。音変化した「こまねく」が今は一般的です - 「神妙な面持ち」ってどんな顔? 辞書には2つの意味がありました
「不思議」と「おとなしい」。同じ言葉に二つの顔があります - 「おざなり」と「なおざり」、どっちがどっち?
やるけれど、いい加減なのが「おざなり」。そもそもやらないのが「なおざり」 - 「女心と秋の空」? もとは「男心」でした
広辞苑は「のちに『男』を『女』に置き換えて…」と、入れ替わりの順番まで記しています - 「較差」って知っていましたか? 二つの”かくさ”の話
格づけの差が「格差」、比べた差が「較差」。読みが「かくさ」になった理由も - 「お話ししました」の「し」が二つ、間違いじゃないの?
名詞は「話」、動詞は「話し」。送り仮名を決めるのは品詞です - 「幾重も」? 辞書にあるのは「幾重にも」でした
広辞苑は「ひたすら願う気持を表す」と、言葉の温度まで書き添えていました - 「吉祥モチーフ」? ベテランの鉛筆が教えてくれたこと
モチーフは題材、文様は模様そのもの。指しているものの層が違います - 「彷彿とさせる」? 二つの形が混ざっていました
「彷彿させる」と「彷彿とする」。辞書は幅を示し、媒体はその中から選びます - 「あずま通り」?「あづま通り」? 答えは現地の看板にありました
通り名は固有名詞。辞書では確かめられない正解があります - 「絶景三昧」はOK。では「酒三昧」は? ルーツは仏教の言葉でした
もとは修行の言葉。新聞は言葉の生まれに敬意を払って使い方を絞ります - 「だじゃれ混じり」?「だじゃれ交じり」? 決め手はとけ合うかどうか
とけ合わないなら「交」、とけ合うなら「混」。赤と黄色の絵の具で見分けます - 「手かがり」、読めてしまいませんか? 読めてしまう誤字ほど怖い
濁点がずれただけの誤字は、読めてしまう。目次と見出しの照合もすり抜けます - 「ダウンジャケット」、ダウンは入っていますか? 名前が中身を表すとき
「ダウン」は形ではなく中身の名前。言い切れないときは鉛筆で問いかけます - 「トマト型」?「トマト形」? 読みは同じ「がた」、だから意味で選ぶ
足形は足あと、足型は靴の木型。読みが同じ「がた」は意味で選びます - 「贅沢な設え」?「贅沢な設い」? どちらも正解でした
昔の「しつらい」と今の「しつらえ」。活用が変わって、名詞の形が二つ残りました - 「21%の差」?「21ポイントの差」? 率と率の差はポイントで
率どうしの差は「%」ではなく「ポイント」。単位ひとつで読み手が受け取る数字が変わります
校正の現場で知ったこと
- 雑誌の裏側で驚いた「写真の加工」
誌面の一枚は、丁寧に整えられています - 数字だけなのに難しい「カレンダー校正」
祝日、六曜、うるう年。一マスずつ確かめます - (火・祝)?(火・休)?
「国民の休日」は「国民の祝日」ではありません - 星占いの校正で、天文の基礎から学び直した話
恒星と惑星、黄道、そして「逆行」の本当の意味
校正を学びはじめたころ
- 校正ってどんな仕事? 通信講座を受けてみた
活字が好き、から始まった学びの記録 - 通信講座・1月目でやったこと
校正記号、原稿引き合わせ、用字用語の練習
調べるほど、言葉は面白い
こうして並べてみると、「どちらが正しいか」で決まる言葉は、意外と多くありません。辞書に載っているか、誤用と書かれているか、それとも触れられていないのか——資料によって扱いが違うことのほうが、ずっと多いのです。
だから校正の仕事は、正しさを裁くことではなく、その文章にいちばんふさわしい言葉を、根拠を添えて手渡すことなのだと思っています。これからも、現場で出会った言葉を少しずつ書き足していきます✍️

