【校正の現場から】「較差」って知っていましたか? 二つの”かくさ”の話

「較差」という言葉を、私は知りませんでした。「格差」ならよく見るけれど、こちらの「較」のほう。辞書を引いてみたら、意味も使う場面も違う、別の言葉でした。しかも読み方にも、思いがけない事情があったんです。

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ポイントを整理すると

  • 格差=格づけの差。明鏡国語辞典(第二版)は「資格・等級・所得・価格などの、格づけの上の差」。上下や序列のある差のことです(例:格差社会/賃金格差/一票の格差)
  • 較差=比較した差。広辞苑(第七版)は「二つ以上の事物を比較した場合の、相互の差の程度」。明鏡は「おもに気象で使う」として、「気温の較差が大きい」を例に挙げています
  • 記者ハンドブック(第14版)には、較差は「比較した差、気象関係」とあり、「気象以外は『差、違い』などに言い換える」と注記されています

なぜ「かくさ」と読むのか

ここが面白かったところです。広辞苑にも明鏡にも、「較差(こうさ)の慣用読み」と書かれています。つまり——本来の読みは「こうさ」。「かくさ」は、あとから広まった読み方なんです。

では、なぜ「かくさ」になったのか。常用漢字表を見てみたら、答えがありました。「較」の音は「カク」だけ。「コウ」の読みは載っていないんです。比較(ひかく)の「較」ですね。

つまり「かくさ」という読みは、うっかりの読み間違いではなく、常用漢字表どおりに読んだ結果だったわけです。慣用読みには、ちゃんと理屈がある——そう分かると、「慣用読み」という言葉の見え方まで変わってきます。

現場からひとこと

この一組は、辞書とハンドブックの役割分担がとてもよく分かる例でした。辞書が教えてくれるのは意味——格づけの差なのか、比較した差なのか。記者ハンドブックが教えてくれるのはどうするか——気象以外は言い換えなさい、と。

そして「言い換える」という選択肢を持っていることが、案外大事なのだと思います。「較差」を残すか、「差」にするか。判断の基準は、正しさだけではありません。読む人が、立ち止まらずに読めるかどうか。見慣れない言葉を使わずに済むなら、そのほうが親切なこともあります。

上下のある差が「格差」、比べたときの差が「較差」。迷ったら「差」で十分です✍️

※事例は実際の経験をもとに再構成した架空の例です。

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