【校正の現場から】「待ち侘びる」はワクワク待つこと? 辞書では違いました

「春を待ち侘びる」。私はこれを、楽しみにワクワク待つこと——そんなイメージで使っていました。ところが辞書を引いてみたら、まったく違ったんです。書かれていたのは「待ちくたびれる」でした。

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ポイントを整理すると

  • 広辞苑(第七版)は「待ちくたびれて待つ気力を失う。気をもみながら待つ」、明鏡国語辞典(第二版)は「なかなか来ないので心配しながら待つ。待ちあぐむ」と説明しています
  • 「わびる」の字は「侘びる」(にんべん)。あやまるほうの「詫びる」(ごんべん)とは別の字です。意味は「気落ちする、思いわずらう」
  • 弾む気持ちを伝えたいなら、「心待ちにする」「待ち焦がれる」「心弾ませて待つ」「首を長くして待つ」などの言い換えがあります

「〜わびる」は、疲れてしまうこと

「〜わびる」は、動詞について「〜するのに疲れる・気力を失う」を表す言い方です。仲間を並べてみると、はっきりします。

  • 待ちわびる=待ちくたびれる
  • 恋いわびる=恋しく思ってつらくなる
  • 住みわびる=住みづらくて嫌になる

どれも、楽しい方向ではありませんよね。ちなみにこの「侘」は、「侘び寂び」の「侘」と同じ字。日本の美意識を表すあの言葉も、もとは「思いわずらう・心細い」という気持ちから来ています。字を知ると、意味がすとんと納得できるんです。

ただし正直に言うと、「春を待ち侘びる」のように、待ち遠しさを表す使い方も広く見られます。ワクワク楽しみ、というより「待つのがつらいほど待ち遠しい」——その含みで受け取るのが、ちょうどいい距離感かなと思います。

現場からひとこと

もし原稿が、明らかに”弾む気持ち”として「待ち侘びる」を使っていたら。校正では「辞書では待ちくたびれる意味です」とだけ伝えるのではなく、言い換えの候補を添えて提案します。「心待ちにする」なら落ち着いた期待、「心弾ませて待つ」ならワクワク感が前に出る、というように。

「これは違います」で終わらせない。代案を持っているかどうかで、指摘は”ダメ出し”にも”手助け”にもなります。書き手が本当に言いたかったことは何だろう——そこを想像しながら言葉を探すのが、この仕事のいちばん楽しいところかもしれません。

「侘びる」は、気落ちすること。弾む気持ちには、弾む言葉を✍️

※事例は実際の経験をもとに再構成した架空の例です。

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