メールを書いていて、いつも一瞬止まる言葉があります。「先日お話ししました件について」——この「し」、二つ並んでいていいんだっけ? なんだか落ち着かなくて、つい「お話しました」と直したくなる。辞書を引いてみたら、二つでよかったんです。
目次
ポイントを整理すると
- 名詞なら「話」(送り仮名なし)。明鏡国語辞典(第二版)の例は「佐藤さんとお話をする」「彼は話がうまい」
- 動詞の連用形なら「話し」(「し」を送る)。例は「佐藤さんにお話しする」「先生がお話しになる」
- 複合語は、上に付くとき「話し…」(話し合い/話し中)、下に付くとき「…話」(世間話/作り話)と書くことが多い、とされています
分解すると、納得できます
「お話ししました」は、こう組み立てられています。
お + 話し + しました = お話ししました
ていねいの「お」に、動詞「話す」の連用形「話し」、そして「します」。つまり一つ目の「し」は「話し」の一部、二つ目の「し」は「します」の一部。役割がまったく違うんですね。同じ形は、ほかの言葉でも起きます——「お探しします」「お貸しします」。並べてみると、急に自然に見えてきませんか。
いっぽう「お話をする」の「話」は名詞なので、送り仮名はつきません。同じ「はなし」でも、品詞が変われば書き方も変わる。それだけのことでした。
現場からひとこと
この言葉のこわいところは、正しい形のほうが落ち着かなく見えることです。「し」が二つ並ぶと、目がザワッとする。だから「一つ多いのでは」と直したくなる。でもその違和感で赤字を入れてしまったら、正しいものを崩してしまうことになります。
送り仮名は、見た目の落ち着きで決まるものではありません。決めるのは品詞。名詞か、動詞か。そこに戻れば、迷いようがない。違和感は「調べる合図」であって、「間違いの判定」ではない——このシリーズで何度も出会ってきたことに、今回もまた行き当たりました。
名詞は「話」、動詞は「話し」。「し」が二つ並んでも、大丈夫です✍️
※事例は実際の経験をもとに再構成した架空の例です。

