【校正の現場から】「破天荒」の本当の意味は? 実は”未曾有・前代未聞”

「破天荒な性格の主人公」「破天荒な生き方」。豪快で型破りな人、というイメージで使われることが多い言葉ですよね。でも——校正の現場でこの言葉に出会って辞書を引いたら、本来の意味は少し違っていました。今日は「破天荒」のお話です。

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ポイントを整理すると

  • 本来の意味は「今まで誰もしなかったことを、初めて成し遂げること」未曾有・前代未聞と同じ仲間です
  • いっぽう「豪快」「無鉄砲」「奔放」の意味で使うのは、本来の用法ではありません。明鏡国語辞典(第二版)も「破天荒な性格」といった使い方を誤りと注記しています
  • ただし「破天荒な人」という言い方も広く定着しているので、頭ごなしに”間違い”と切り捨てるより、「本来の意味とは違いますよ」と指摘するのが実際的です

「破天荒」の由来は、中国の科挙の物語

この言葉、実は素敵な由来があります。区切りは「破天/荒」でも「破/天/荒」でもなく、「破」+「天荒」

昔の中国・荊州(けいしゅう)という地域からは、科挙(官吏を選ぶ難関試験)の合格者が長いあいだ一人も出ませんでした。人々はこの地を、あきらめ半分に「天荒(てんこう)」=何も生まれない未開の荒れ地と呼んでいたそうです。そこへ、劉蛻(りゅうぜい)という人が、ついに初めて合格する。人々はこれを「天荒を破った」——つまり「破天荒」と称えました。

誰も成し得なかったことを、初めて成し遂げる。それが「破天荒」の芯にある意味です。こう知ると、「豪快な性格」とはずいぶん違う言葉だと分かりますよね。ちなみに漢字を一字ずつ「天=手本」などと分ける説明も見かけますが、それは後づけの俗説。物語のほうが、ずっと本当で、ずっと味わいがあります。

現場からひとこと

「破天荒」は、意味が広く変わってしまった言葉の代表格です。だからこそ、校正でも扱いに気をつかいます。「破天荒な性格」を全部×にしてしまうと、書き手の伝えたい”豪快さ”まで否定することになりかねない。かといって、本来の意味を知らずに使っているなら、そっと教えてあげたい。

だから私は、「本来は”前人未到のことを成し遂げる”という意味なんです。ここは”型破りな”などに置き換えると、より伝わるかもしれません」と、根拠と代案を添えて指摘します。正しさを突きつけるのではなく、言葉の来し方を一緒に眺める——そんな距離感でいたいなと思っています。

言葉の由来を知ると、その一語がぐっと立体的に見えてくる。だから辞書を引くのは、やめられません✍️

※事例は実際の経験をもとに再構成した架空の例です。

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