【あいつは異常やない】『異常に非ず』桜木紫乃

夕暮れの昭和の大阪の街並みと、机の上の古い新聞と取材ノート。『異常に非ず』桜木紫乃のアイキャッチ
ゆうこ

今日は、実際に起きた事件をもとにした長編小説を紹介します

読み進めるほど
気持ちが沈んでいく本でした

でもどうしても引き込まれてしまう

夢中になってページをめくっているうちに
読み終えていました

目次

この本について

書名異常に非ず
著者桜木紫乃
出版社新潮社
発売日2026年4月22日
ページ数480ページ
定価2,750円(税込)

著者について

桜木紫乃(さくらぎ・しの)さんは
1965年北海道釧路市生まれ

2002年に「雪虫」でオール讀物新人賞を受賞しました

『ラブレス』で島清恋愛文学賞🥇
『ホテルローヤル』で直木賞🥇
『家族じまい』で中央公論文芸賞を受賞しています🥇

親と子、男と女の愛憎を描き続けてきた作家です

新潮社の紹介ページでは
親子と愛憎の「究極に迫る長篇小説」と紹介されていました

あらすじ

昭和54年、大阪

猟銃を持って銀行に押し入った花川清史は
4人を殺害して立てこもります

香川からヘリで駆けつけた母の説得も拒み
最後は射殺されました

事件解決後に新聞記者の海原は
犯人がどんな人生を歩んできたのかを
深く深く掘り起こしていきます

犯人の母は
息子を育てた日々を問い直します

そして犯人の愛人は
彼と過ごした時間を振り返る

それぞれのまなざしから
ひとりの男の
暗い生涯が浮かび上がってきます

物語のモデルになっているのは
1979年(昭和54年)に大阪で実際に起きた
銀行立てこもり事件です

昭和の美容院で、鏡の前に座り髪を整えてもらう年配の女性の後ろ姿。窓の外にはヘリコプターが待っている

こんな人に読んでほしい

  • ニュースで事件を知るたびに「なぜ」と考えてしまう人
  • 実際の事件をもとにした小説が好きな人
  • 親子の関係を描いた物語に心を動かされる人

心に残った一文

異常な人間の異常な行為というのは簡単だ。それがいちばん人を安心させる。だが犯罪とは個々の暗いところに根ざしながら、実のところ時代と社会のゆがみが生んでいるのではないか。

——桜木紫乃『異常に非ず』より

わたしの感想

異常な人間の異常な犯行

この言葉で片付けてしまえば
人はなんとなく安心します

自分とは関係のない
特別な人が起こした事件だと思えるからです

犯人の清史は自分のことを
「オレは精神異常やない。道徳と善悪をわきまえんだけや」
と言います

そして事件を追う記者も
「あいつは異常やない」と言うのです

同じ言葉でも
誰が言うかで重みが違ってきます

犯人が言えば
「お前が言うな」と思う人も多いでしょう

でも記者の言葉は
犯人の生涯を掘り起こしたあとに
たどり着いた言葉でした

母・カヨのこと

私がいちばん心に残ったのは
母のカヨです

カヨは丙午生まれで
器量のよくない女として育てられました

そんなカヨはこう言います
「自分だけは息子の味方でいなければいけない」

この思いが
カヨの生きる支えだったような気がします

でも息子は
どんどん過激になっていきます

「貧乏よりも貧乏臭さが嫌なんじゃ」と母を蹴り倒し
刺そうとまでする

それでも、カヨは息子の味方でした

立てこもる息子の説得に呼ばれたカヨは
ヘリを待たせて髪を整えに行きます

「しわしわで恥ずかしいと、
 あの子が思うといけないから」

異常といってしまえば、異常な行動です

でも、子を思う母の気持ちだといえば
そうなのかもしれない…とも思います

新潮社の紹介ページに載っている書評によると
母親が美容院に立ち寄ったのは
実際の事件でもあったことだそうです

清史に惚れた亜紀もまた
不幸な女でした

母も恋人も
清史のそばにしか
居場所を持てなかったように見えます

事件の背景には
どんどん成長していく日本のゆがみがあります

でも、ゆがみはどの時代にもあるものです
犯罪の理由を、時代のせいにしてはいけない

そして、どんな人でも
いつも正しくいられるわけではありません

それでも
人が人を傷つけてよい理由なんてない

「異常」の一言で片付けず
「時代のせい」にもしない

その間で、ずっと考えさせられる一冊でした

今日はここまで

読んだ本で心はつくられる

「ちょっと本でも読んでみようかな」と思ったら
ぜひ手に取ってみてください📚

「今日はここまで」です
笑顔で一日を終えられますように✨

読んでいただき
ありがとうございました😄

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