【校正の現場から】冬季と冬期|鉛筆で書いたのは「期」のほうだった

冬季と冬期の違いを図解したイラスト。「季」は冬という季節、「期」は冬のあいだの決まった期間。日付で区切れるかどうかで見分ける

今日のゲラは、ウインタースポーツの選手のプロフィールでした。経歴には、オリンピックに出場したことが書かれています。大会名は「〇〇五輪」のような短い形でした。気になって正式名称を調べてみると、そこには「冬季」という言葉が入っていました。

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赤字ではなく、鉛筆で

「〇〇五輪」も「〇〇冬季オリンピック」も、間違いではありません。短く書くか、正式名称で書くかは、文章や媒体の都合で決まることです。だから赤字で直すのではなく、鉛筆で「正式名称は〇〇冬季オリンピックでは?」と書き添えて、判断を任せようと思いました。

念のため、ベテランの校正者に「これ、どうでしょう」と相談に行きました。すると、そっと教えてくれたんです。私の鉛筆のほうが「冬期」になっていました。

「季」と「期」を辞書で確かめる

広辞苑(第七版)で「冬季」を引くと「冬の季節」とあり、例に「冬季オリンピック」が挙がっています。明鏡国語辞典(第二版)も同じでした。

一方の「冬期」は、広辞苑では「冬の時期。冬の期間」。例は「冬期講習」です。明鏡は「冬の期間」とあり、「冬期講習」「冬期休業」の例が並んでいます。

つまり、「冬季」は冬という季節、「冬期」は冬のあいだの決まった期間です。見分けるときは、「いつからいつまで」と日付が書けるかを考えるとわかりやすくなります。冬期講習なら、たとえば「12月26日から1月7日まで」。冬期休業なら「12月29日から1月3日まで」。どちらも、始まりと終わりがはっきり決まっています。

冬季オリンピックの「冬季」は、期間ではなく季節の名前です。夏に行う「夏季オリンピック」と分けるために、「冬の大会」だと示しています。

もっと身近な例では、「冬季うつ」という言葉をよく見かけます。冬になると気分が落ち込みやすくなる、季節性のうつのことです。こちらは「12月26日から」のような日付では区切れません。冬という季節が来ると起こるので「冬季」です。日付で区切れる冬期講習と並べると、違いがよくわかります。読みは同じ「とうき」でも、指しているものが違うんですね。

記者ハンドブック(第14版)も見てみました。こちらは、「冬期」は「冬季」に統一するとしています。そのうえで注として、「冬期講習」などの固有の名称や、特に期間を表す場合は「冬期」を使う、とあります。新聞では「冬季」が基本で、「冬期」は期間をはっきり言いたいときに使う、という整理です。

季節と期間の境目は、実際の文章でははっきりしないこともあります。迷ったときにどちらかにそろえられるよう、基本の形を決めてあるのだと思います。

現場からひとこと

正しさを伝えるための鉛筆が間違っていたら、指摘そのものが信用されなくなってしまいます。ゲラの文字は何度も見直すのに、自分で書くメモは、つい勢いで書いていました。

相談に行ったからこそ、ゲラを戻す前に気づけました。そして、そっと教えてもらえたことに、今も感謝しています。

指摘する鉛筆ほど、自分の字を見直す。書いたあとに、もう一度読み返すことを大切にしています✍️

※事例は実際の経験をもとに再構成した架空の例です。

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