【命を守る術などなかった】『羆嵐』吉村昭

吉村昭『羆嵐』の紹介記事のアイキャッチ。雪の夜、ランプの明かりがもれる板壁の開拓小屋の扉の前に、大きな羆が背中を向けて立っている。雪の上には扉まで続く大きな足あと
ゆうこ

今日は、とても衝撃を受けた本を紹介します

ずっと前から気になっていた一冊です。

熊のニュースが続いていることもあり、
今こそ読むべきかなと、手に取りました。

大正時代の北海道で
実際にあった出来事をもとにしたお話でした。

目次

この本について

書名羆嵐(くまあらし)
著者吉村昭
出版社新潮社(新潮文庫)
発売1982年11月(単行本は1977年5月)
ページ数272ページ
定価693円(税込)

著者について

吉村昭(よしむら・あきら)さんは、
1927年、東京の日暮里生まれ。

1966年に『星への旅』で太宰治賞を受賞し、
同じ年の『戦艦武蔵』で、記録文学に新しい道を開きました🥇

丁寧な取材にもとづく記録文学や歴史文学を数多く書き、
1973年には菊池寛賞を受けています。

2006年に亡くなりました。

『羆嵐』は旭川営林局にいた
木村盛武さんがまとめた事件の報告書と
当時の住民の回想をもとに書かれたそうです。

あらすじ

大正4年(1915年)の12月。

北海道の山あい、
苫前村の六線沢という小さな開拓地に、
一頭の羆が現れます。

冬ごもりの穴を見つけそこねた
「穴持たず」と呼ばれる羆です。

粗末な板壁の家は、
羆の前ではないも同じでした。

2日のあいだに2軒の家が襲われ
妊婦さんを含む6人が亡くなります。

警察や近くの村の男たちが集まっても、
羆にはかないません。

村の区長は、
乱暴者として嫌われていた年老いた猟師・銀四郎に
羆を仕留めてくれるよう頼みます。

銀四郎は、集まった男たちとは別に、
ひとりで雪の山に入ります。

そして次の日の昼すぎ、
何日ものあいだ誰も近づけなかった羆を、
仕留めました。

1980年には、
倉本聰さんの脚本でラジオドラマになりました。
銀四郎の声は、高倉健さんです。

同じ年の11月には、テレビドラマにもなりました。
銀四郎を演じたのは三國連太郎さん。
森田健作さん、前田吟さん、篠ひろ子さん、
小林稔侍さんなどが出ています。

吹雪の中、猟銃を肩にかけた猟師が風の中に立ち、右手前の雪の上に大きな羆が倒れて雪に埋もれかけているイラスト

こんな人に読んでほしい

  • 熊のニュースが気になっている人
  • 北海道の開拓の歴史に興味がある人
  • 吉村昭さんの記録文学を、読んでみたいと思っている人

わたしの感想

衝撃を受けたのは、
羆そのものより、前提の話でした。

六線沢の人たちは、東北の農家でした。

たびかさなる水害で田畑を失い、
北海道へ渡ります。

最初に入った土地では
イナゴの大群に作物を食い尽くされ、
「水がよく、虫も少ない」と勧められて移った先が
六線沢でした。

半ば騙されるようにして移り住んだ先に
羆が出たのです。

家は板壁。

窓にも戸にも、
羆を止める力はありません。

命を守る術などなかったのです。

文明から見放された人たちは
亡くなった人の体を餌として残し
羆を斃(たお)すことを決めます。

むごい話です。

でも、目をそらさずに読みました。

熊に襲われた人は
2025年度だけで238人。

そのうち13人が亡くなっています(環境省の速報値)。
100年以上前の話が、遠い話に思えなかったから
今こそ読もうと思ったんです。

題名の「羆嵐」の意味は、
本のいちばん最後に出てきます。

羆を仕留めたあとに吹き荒れる
強い風のこと。

地元では、
昔からそう言われているそうです。

そして「穴持たず」は、
手元の広辞苑にも明鏡国語辞典にも載っていません。
猟師さんや山の人の言葉なのだと思います。

辞書になくても、
とても重みのある言葉だと感じました。

今日はここまで

読んだ本で心はつくられる

「ちょっと本でも読んでみようかな」と思ったら
ぜひ手に取ってみてください📚

「今日はここまで」です
笑顔で一日を終えられますように✨

読んでいただき
ありがとうございました😄

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