【校正の現場から】「舵を取る」と「舵を切る」、どっちを使う?

「チームの舵を取る」と「新しい方針へ舵を切る」。どちらもよく使う言い方ですが、”舵を取る”と”舵を切る”、なんとなく混ぜて使っていませんか?校正の現場では、この二つを意味で選び分けます。今日は、似ているようで違う「舵」の話です。

目次

ポイントを整理すると

  • 舵を取る=進行を導く・責任者として采配する。船の舵を握って、進む先を導いていくイメージ。例:チームの舵を取る/経営の舵を取る
  • 舵を切る=方向転換する・方針を変える。舵をぐいっと切って、進路を変えるイメージ。例:攻めの姿勢へ舵を切る/海外展開へ舵を切る
  • どちらも正しい表現です。だから”正誤”ではなく、「導く」なのか「向きを変える」なのか——伝えたい意味で選ぶのがポイントです

「取る」か「切る」かは、意味で決まる

おもしろいのは、この二つが”どちらが正しい”の関係ではないことです。舵を取るは継続——ずっと握って導き続けるイメージ。舵を切るは転換——ある瞬間に、ぐいっと向きを変えるイメージ。もとになった船の操作が、そのまま言葉の意味になっているんですね。

だから、「リーダーとしてまとめる」話なら取る、「方針を大きく変える」話なら切る。たとえば「新社長がチームの舵を切った」と書くと、”新しい方向へ転換した”というニュアンスになり、「まとめ役になった」とは少し違って伝わります。逆の場面で取り違えると、書き手の伝えたいことが、わずかにずれてしまう。ここを見分けるのが、校正の細やかな仕事です。

現場からひとこと

「舵を切る」も、まったく正しい表現です。だから校正でも、これを”間違い”として直すことはありません。ただ、書き手が「導く」つもりで「切る」を使っていたら、「ここは”取る”のほうが、意図が伝わるかもしれません」と、そっと確かめます。正しいか間違いか、ではなく、いちばん伝わる一語はどれか。その物差しで言葉を選ぶ手伝いをするのも、校正の役目だと思っています。

似ている言葉ほど、意味の芯をそっと見比べる。そうすると、文章の狙いがくっきりしてきます。

導くなら「取る」、向きを変えるなら「切る」。意味に合った一語で、文章の説得力はぐっと上がります✍️

※事例は実際の経験をもとに再構成した架空の例です。

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