【校正の現場から】「蒸留」と「蒸溜」——ウイスキーの表記はどっち?

「蒸留水」と「蒸溜所」。同じ「じょうりゅう」なのに、漢字が違うのに気づいたことはありますか?校正の現場では、この使い分けが意外と悩ましいのです。今日は「蒸留」と「蒸溜」のお話です。

目次

ポイントを整理すると

  • 意味はほぼ同じ。液体を加熱して蒸気にし、冷やして分ける——どちらも同じ操作を指します
  • 本来の表記は「蒸溜」。ただし「溜」は表外字(常用漢字表にない字)なので、常用漢字の「留」で代用した「蒸留」が一般の文章では広く使われます
  • ウイスキーや焼酎などお酒の世界では、伝統的に「蒸溜」。施設名も「山崎蒸溜所」のように公式表記が決まっていることが多いです

正誤ではなく「文脈で選ぶ」

ここが面白いところで、「蒸留」も「蒸溜」も、どちらかが間違いというわけではありません。だから校正では「こっちが正しい」と直すのではなく、その文章がどの文脈にあるかを見て判断します。

理科の説明や一般的な文章なら「蒸留水」「蒸留装置」で自然。でもウイスキーの記事なら「蒸溜工程」、施設名なら公式サイトの表記に合わせる。同じ言葉でも、まとう文脈で最適な漢字が変わるんですね。

現場からひとこと

「正しい漢字はどっち?」と一つに決めたくなりますが、言葉には「正誤」だけでなく「ふさわしさ」があります。表外字か常用漢字か、業界の慣用はどうか、公式表記は何か——いくつもの物差しを行き来しながら、その一文にいちばん似合う字を選ぶ。校正は、そんな細やかな目配りの仕事です。

今度ウイスキーのボトルやラベルを見かけたら、「蒸溜所」の字にちょっと注目してみてください。作り手のこだわりが、漢字一字にも表れています。

正しさだけでなく、ふさわしさを選ぶ。それも校正の楽しさです✍️

※事例は実際の経験をもとに再構成した架空の例です。

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