【校正の現場から】「ダウンジャケット」、ダウンは入っていますか? 名前が中身を表すとき

雑誌の商品紹介のゲラに「ダウンジャケット」とありました。ところが素材の欄には「バージンウール」。ダウンやフェザーが使われているようには読めません。ダウンの入っていないダウンジャケット——そんなことがあるのでしょうか。

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ポイントを整理すると

  • 広辞苑(第七版)は、ダウンジャケットを「水鳥の羽毛を布地の間に詰めた上着。軽くて保温性に優れる」と説明しています。辞書の上でも、羽毛が入っていることが前提です(明鏡国語辞典には見出しがありませんでした)
  • 家庭用品品質表示法の「繊維製品品質表示規程」では、羽毛は「ダウン」と「フェザー」に分けて、それぞれの割合を表示することになっています
  • 服の名前には、形の名前(ブルゾン・パーカー・コート)と、中身の名前(ダウン・レザー・デニム)があります。ダウンジャケットは、中に入っているものの名前です

法律が決めているのは、商品のタグ

ただし、この規程が決めているのは商品についている品質表示(タグ)の書き方です。雑誌の紹介文は、その対象ではありません。だから「法律違反なので直してください」という話ではないんです。

それでも違和感が残るのは、読者の受け取り方のほうです。「ダウンジャケット」と読めば、読者は羽毛が入っていると思って、暖かさや値段、手入れのしかたまで思い浮かべます。合成皮革のジャケットを「レザージャケット」とは書かず「フェイクレザー」と書くのと同じで、中身の名前は、中身と合っていてほしいところです。

見かけた説明も、元の資料で確かめる

じつは調べる途中で、「ダウンと表示できるのは、ダウンが50%以上の場合」という説明を見かけました。ところが規程の原文を読むと、その決まりは見当たりませんでした。50%という数字は布団の販売ページなどで見かけるもので、ジャケットの表示の決まりとは別の話が混ざっていたようです。

「あづま通り」の回では、確かめる先は辞書ではなく現地の看板でした。今回の確かめる先は、商品の素材の欄と、法律の原文。どこで見かけた説明でも、最後は元の資料で確かめる。校正の基本は、ここでも同じでした。

現場からひとこと

今回は、言い切ることができませんでした。素材がウールだと分かっても、ゲラだけでは中に何が詰まっているかまでは確かめられません。だから鉛筆で、こう問いかけました。「ダウンと表示できるのは、詰め物に羽毛を使い、そのうちダウンが使われているもののようですが、こちらの商品はダウンが使用されているものでしょうか」。広辞苑の説明も根拠として添えました。

「違います」ではなく「〜でしょうか」。判断は相手に残して、確かめるための材料だけを一緒に渡す。言い切れないときの鉛筆は、こういう形がいちばん届きやすいと思っています。

名前が中身を表すとき、確かめる先は商品の素材。言い切れないときは、鉛筆で問いかける✍️

※事例は実際の経験をもとに再構成した架空の例です。

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