ゲラに「トマト型の器」とありました。そこへベテランの校正者が、赤字で「形」と入れていました。「トマトがた」と読めば、どちらの字でも通じそうです。なぜ「形」なのか。辞書とハンドブックを開いてみました。
ポイントを整理すると
- 形=目に見えるかたちです。明鏡国語辞典(第二版)の例は「ハート形」「足形」。記者ハンドブック(第14版)の例は「ひょうたん形」「三日月形」「コの字形」です
- 型=手本・タイプ・サイズです。明鏡の例は「鋳型」「型紙」。記者ハンドブックの例は「型破り」「ひな型」「大型機械」「デスクトップ型」です
- 広辞苑(第七版)も、形状の意味は「ふつう『形』と書く」、形をつくり出すもとになるものは「普通『型』と書く」と分けています。トマトのかたちをした器は「トマト形」です
同じ「あしがた」でも、字が違うと別のもの
記者ハンドブックに、とても分かりやすい例がありました。「足形」は、踏んで残る足のかたち。「足型」は、靴を作るための木型です。読みは同じ「あしがた」なのに、字が変わると指すものがまるで違います。
「トマト形」と「トマト型」も同じです。「トマト型」と書くと、トマトを作るための型とも読めてしまいます。器は型を使って作ることもあるので、器の話ではなおさら紛らわしい。かたちがトマトなら「形」と書くことで、読み手は迷わずにすみます。
取り違えやすいのは、どちらも「がた」と読むからだと思います。「がた」と聞くと、まず「型」の字が浮かびます。でも「形」も「かた」と読める字です。読みでは決まらないので、意味で選ぶしかありません。
現場からひとこと
明鏡は、この書き分けについて「はっきりとした一線は画しがたい」とも書いています。水泳の「自由形」のように、どちらの字も見かける言葉があるからです。それでも今回が赤字だったのは、迷う余地がなかったからだと思います。記者ハンドブックの「ひょうたん形」「三日月形」は、物の名前に「形」を付けるという、「トマト形」とまったく同じ並びです。
「だじゃれ交じり」の回は、辞書も新聞も迷いを認めている書き分けだったので、鉛筆で出しました。今回は、同じ形の例がはっきり載っている。根拠がどこまで言い切っているかで、赤字か鉛筆かが決まる。ベテランの赤字を見て、あらためてそう感じました。
目に見えるかたちなら「形」、手本やタイプなら「型」。読みは同じ「がた」だから、意味で選びます✍️
※事例は実際の経験をもとに再構成した架空の例です。

